滋賀県視察報告|地域資源を、暮らし・観光・教育・経済につなげる

目次

地域資源を、暮らし・観光・教育・経済につなげる

びわ湖での現地調査。自然資源をどう学びや観光につなげるかを考えました。

令和6年3月25日から27日にかけて、会派の県外視察で滋賀県を訪れました。調査したのは、健康づくり、観光振興、デジタル地域通貨、温泉地再生、地域経済、そして自然体験学習です。

滋賀県には琵琶湖という大きな自然資源があります。ただ、今回あらためて感じたのは、資源は「ある」だけでは地域の力にならない、ということでした。暮らし、観光、教育、経済にどうつなげるか。そこに行政の仕事があるのだと思います。

これは青森にもかなり重なる話です。青森には十和田湖、陸奥湾、白神山地、八甲田、温泉、食、祭り、雪、農林水産業があります。ないものばかりではありません。あるものをどうつなぎ直すか。今回の視察では、そのことを考えました。

視察の概要

令和6年3月25日~27日

滋賀県庁/おごと温泉観光協会・旅館協同組合/京都橘大学/びわこビジターズビューロー・BSCインターナショナル

1 「健康しが」から考える、健康と生活環境

滋賀県庁での説明を受ける様子。

滋賀県は、視察時点の統計で平均寿命が男性1位、女性2位という全国トップクラスの県でした。一方で、青森県は平均寿命が長年厳しい位置にあります。もちろん、飲酒、喫煙、運動、健診受診などの生活習慣は大事です。青森県でも減塩や健診受診率向上などの取り組みは続けていかなければなりません。

ただ、健康を「個人の努力」の話だけにしてしまうと、かなり大事なところを見落とす気がします。滋賀県の説明で印象的だったのは、生活習慣だけでなく、所得、労働時間、失業率、地域のつながり、高齢単身世帯の少なさなど、生活環境全体が健康に関係しているという点でした。

結局、健康は暮らしの問題です。県民が「長く生きたい」と思える社会なのか。青森で安心して働き、暮らし、地域とつながり、孤立しない環境があるのか。平均寿命を考えるなら、医療や保健だけでなく、賃金、働き方、交通、福祉、ジェンダー格差まで含めて見る必要があります。生活習慣と生活環境は、健康を考える上で両輪だと感じました。

2 シガリズムと、青森の観光

自然資源を活かした観光振興「シガリズム」についての説明。

滋賀県の観光ビジョン「シガリズム」は、琵琶湖、歴史、文化、食、自然体験などを活かし、「ゆっくり、ていねいな」滋賀らしい観光をつくろうとする取り組みでした。コロナ禍を経て、開放的な空間やアウトドア、体験型コンテンツへの関心が高まったことも追い風になっています。

一方で、滋賀県には「都市圏から近いがゆえに日帰りが多い」という課題もあります。青森県は逆に、アクセス面では不利です。そこは簡単ではありません。しかし、観光コンテンツそのものでは、青森も決して他県に劣るものではないと思います。

課題は、点を面にすることです。自然、食、文化、温泉、祭り、宿泊、交通、体験をどうつなげるか。もう一つ印象的だったのは、映像作品による誘客です。滋賀県では県内ロケの支援やロケ地を巡るPRにも取り組んでいました。映画、ドラマ、アニメの力はやはり大きい。青森でも、フィルムコミッションや映像作品との連携はもっと積極的に考えてよいと思います。

3 デジタル地域通貨「ビワコ」は、お金というより「参加」の仕組み

滋賀県では、デジタル地域コミュニティ通貨「ビワコ」の取り組みについて説明を受けました。地域通貨というと、どうしても買い物や決済のイメージが強くなります。しかし「ビワコ」は、単なる決済手段というより、地域に関わるきっかけをつくる仕組みとして設計されていました。

たとえば、清掃ボランティアに参加する、地元の祭りの山車づくりを手伝う、環境学習船に乗る、県庁職員に相談する。そうした体験や参加を通じて、地域内外の人がつながる。経済効果だけを目的にするのではなく、関係人口やコミュニティを育てるための道具として使っている点が面白いところです。

青森でやるなら、いきなり県全体で一律に、というより、市町村、商店街、観光地、地域イベントなど、目的を絞った実証から始めるのが現実的だと思います。地域通貨は、うまく使えば「地域に参加する理由」をつくれます。ここには可能性があります。

4 おごと温泉に学ぶ、温泉地全体での魅力づくり

ペットと泊まれる宿の取り組み。
琵琶湖を望む客室。
宿泊施設の見学。
おごと温泉観光協会・旅館協同組合との意見交換。

おごと温泉では、観光協会・旅館協同組合の皆さんから、温泉地再生の取り組みを聞きました。かつてのイメージの払拭、コロナ禍からの回復、人手不足への対応、琵琶湖を活かしたコンテンツづくりなど、かなり実践的な話でした。

特に印象に残ったのは、個々の宿がそれぞれの特色を出しながらも、「おごと温泉」という地域全体をどう盛り上げるかを強く意識していたことです。高級路線の宿、ペットと泊まれる宿、団体に対応できる宿など、役割を分けながら、結果として宿泊客を奪い合いすぎない形にもなっていました。

青森にも、浅虫、酸ヶ湯、蔦、大鰐、下風呂など、多くの温泉地があります。個々の宿の努力だけでは限界があります。温泉地全体でブランドをどうつくるか。交通、周辺観光、食、情報発信、人材確保をどうつなげるか。ここは青森県としても考え続けるべきテーマです。

5 地域内再投資力。率直に、ここが一番刺さりました。

京都橘大学での岡田知弘教授との意見交換。

京都橘大学では、地域経済学・地方自治が専門の岡田知弘教授から、「地域内再投資力」について講義を受けました。視察全体の中でも、率直にここが一番刺さりました。

地域で生まれたお金が、地域の外へ流れていくだけでは、地域は豊かになりません。大型開発や企業誘致だけに頼っても、利益が本社へ移り、地域の中に再投資されなければ、地域経済は強くならない。地域の中で繰り返し投資する力をどうつくるか。その主体になるのは、地元の中小企業です。

これは、青森県政そのものに関わる話です。中小企業振興、公契約、地元事業者への発注、働く人の賃金、再生可能エネルギーの地域活用。これらは別々の話ではありません。地域で稼いだものを、地域の暮らしと仕事にどう戻すか。そこを見ないまま「経済振興」と言っても、なかなか実感にはつながりません。

青森に必要なのは、外から大きな何かが来るのを待つだけの経済ではなく、地域の中でお金、人、仕事が回る仕組みです。地域内経済循環という言葉を、単なるスローガンで終わらせないためにも、議会で引き続き問うていきたいと思います。

6 びわ湖自然体験学習と「ミライ、キフ」

BSCインターナショナルでの現地調査。
自然体験学習について説明を受ける様子。
現地での意見交換。
びわ湖の自然を体感する現地調査。

びわ湖では、カヤックやヨットなどの自然体験学習を通じて、子どもたちが環境や自然を大切に思う心を育てる取り組みを見ました。さらに印象的だったのが「ミライ、キフ」です。

これは、体験学習に参加した子どもたちが、SDGsに取り組む企業や団体、大学などの中から、自分で寄付先を選ぶ仕組みです。大人が「これがSDGsです」と教えて終わりではなく、子どもたち自身が考えて選ぶ。そこが良いと感じました。

SDGsは、ややもすると、既存事業にラベルを貼って終わりになりがちです。でも本来は、足元の暮らしや地域、未来をどう考えるかという話のはずです。青森にも、海、湖、山、雪、農林水産業があります。子どもたちの自然体験、修学旅行、環境教育、観光をもっと結びつけられるのではないかと思います。

視察を終えて

青森県政へつなげたいこと

今回の視察で感じたのは、青森県に必要なのは、他県の成功事例をそのまま輸入することではない、ということです。

青森には、すでに自然、食、文化、温泉、農林水産業、人の営みがあります。大事なのは、それらを暮らし、観光、教育、健康、地域経済につなげ直すことです。

「青森には何もない」ではありません。あるものをどう活かすか。地域の中でどう回すか。地域に暮らす人が、ここで生きていくことに誇りを持てるようにするか。

視察で得た学びを、今後の一般質問、委員会質疑、政策提案につなげていきます。

出典:青森県議会「派遣結果(別紙)」令和5年度会派視察報告書

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