鳥取県・島根県視察報告|人口減少の時代に、地域の未来をどうつくるか

目次

人口減少の時代に、地域の未来をどうつくるか

令和8年4月15日から17日まで、会派視察として鳥取県・島根県を訪問しました。今回の視察では、少人数学級、人口減少対策、鳥取砂丘を活用した新産業創出、地域エネルギー・ソーラーシェアリング、そしてトキを象徴とした自然共生のまちづくりについて調査しました。

人口減少が進む地域で、教育、産業、自然、エネルギーをどう次の世代につないでいくのか。青森県にもそのまま重なる問いだと感じました。

視察の概要

令和8年4月15日(水)~4月17日(金)

主な行程
4/15 鳥取県庁(少人数学級・人口減少対策)
4/16 ルナテラス/ローカルエナジー・しばふる太陽光発電所
4/17 出雲市トキ分散飼育センター

鳥取県庁
鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」
ローカルエナジー株式会社
しばふる太陽光発電所
出雲市トキ分散飼育センター

少人数学級、人口減少対策
地域資源を活かした新産業創出
地域新電力、エネルギーの地産地消
ソーラーシェアリング
希少野生動物の保護と自然共生

人口減少下の教育環境整備
若者定着・還流、地域の所得向上
雪・農林水産業・海などの実証フィールド化
再エネの地域活用と地域内経済循環
生物多様性、野生動物との共生

鳥取県庁での調査
鳥取県議会議場にて

1 少人数学級は、人口減少時代の教育の土台

鳥取県では、全国に先駆けて少人数学級に取り組んできました。公立小学校では全学年で30人学級を導入し、中学校でも「中1ギャップ」への対応を意識した学級編制が行われています。

少子化が進めば、自然にクラスは小さくなる。そう考えがちです。しかし、実際にはそう単純ではありません。学校の統廃合、通学距離の長期化、地域の同世代集団の縮小、教員の確保難など、人口減少地域ならではの課題も同時に出てきます。

鳥取県の取組で参考になったのは、少人数学級を「人数を減らす制度」としてだけでなく、子ども一人ひとりに目が届く教育環境をつくる政策として位置づけていたことです。小1プロブレム、中1ギャップ、不登校、特別な支援を必要とする子どもへの対応など、少人数だからこそ早く気づけることがあります。

一方で、少人数学級には教員確保と財源が必要です。鳥取県では、県と市町村が負担を分かち合う「市町村協力金方式」を取り入れていました。ただ、青森県で同じ仕組みを考える場合、市町村の財政力や地域事情に差があるため、県の調整・支援がかなり重要になると思います。

また、教員不足への対策として、県外大学への働きかけ、県外会場での採用試験、教員免許を持ちながら教職に就いていない方への相談会などにも取り組んでいました。青森県でも、教員志望者を待つだけではなく、こちらから働きかける採用広報が必要です。

2 人口減少対策は、子育てだけでは終わらない

鳥取県では、移住定住、関係人口、奨学金返還支援、結婚支援、子育て支援、女性活躍、中山間地域の交通・買い物・医療など、本当に幅広い人口減少対策が進められていました。

印象的だったのは、人口減少対策を「子育て支援」だけに閉じ込めていないことです。若者が県内で働けるか。所得が上がるか。県外に進学した若者とつながり続けられるか。女性や若者が地域の意思決定に関われるか。中山間地域で暮らし続けられる移動手段や医療をどう確保するか。人口減少対策とは、かなり総合的な政策なのだと改めて感じました。

たとえば、奨学金返還支援は、従来は対象業種を限定していたものを、公務員を除く全業種へ広げているとのことでした。関係人口マッチングサイト「とりんぐ」では、地域の困りごとと、県内外の関心ある人をつなぐ仕組みも整えています。

一方で、鳥取県側からも、どの施策が人口推計の上振れにどれほど効いているのか、効果検証は難しいという率直な話がありました。これは青森県にとっても大事な示唆です。施策を増やすこと自体が目的になってはいけません。

青森県で考えるなら、「若者の県内定着・還流」「所得向上と産業振興」「結婚・妊娠・出産・子育て支援」「女性や若者が意思決定に参画できる地域づくり」「中山間地域の生活機能の維持」といった柱を立て、それぞれの施策が何につながるのかを見えるようにする必要があります。

3 鳥取砂丘を、宇宙産業の実証フィールドへ

鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」では、鳥取砂丘の砂地環境を活かし、月面探査ローバーなどの走行実験が行われています。観光地として知られてきた鳥取砂丘を、宇宙産業の実証フィールドとして読み替えている点が非常に面白いと感じました。

鳥取砂丘周辺の実証フィールド
ルナテラスにて

月面の砂と鳥取砂丘の砂が完全に同じというわけではありません。それでも、広い砂地や斜面で実験できること自体に価値があります。平面だけでなく、斜面での走破性を確認できる場所があることは、企業や大学にとって大きな意味を持ちます。

ここで重要なのは、施設をつくっただけではないことです。企業の実証実験、県内企業とのマッチング、宇宙産業ネットワーク、大学との講義、学生ローバー大会、インターンシップ支援などを組み合わせ、若者が先端分野に触れる入口をつくっていました。

青森県が学ぶべきなのは、宇宙産業そのものを真似することではなく、地域資源を新しい角度から読み替える発想です。青森には、豪雪、寒冷地、農林水産業、陸奥湾、津軽海峡、港湾、再生可能エネルギー、防災、医療・介護、交通など、課題であると同時に実証フィールドになり得るものがたくさんあります。

たとえば、除雪の省力化、雪道での自動運転、スマート農業、ホタテ養殖の環境モニタリング、洋上風力と漁業の共生、遠隔医療、介護ロボット、防災技術などです。青森の「困りごと」は、企業や大学にとっては技術開発の現場でもあります。

4 ローカルエナジーに学ぶ、電気を地域で回す仕組み

ローカルエナジー株式会社では、地域資源を活用したエネルギーの地産地消と、地域内経済循環について調査しました。米子市や地元企業が関わり、地域の電力を地域で使い、電気料金として外へ流れていたお金を地域の中に戻す取組です。

ローカルエナジー株式会社での説明
しばふる太陽光発電所(営農型太陽光発電)

あわせて、しばふる太陽光発電所(正式名称は生駒営農型太陽光発電所)も視察しました。ここは、荒廃農地の上部に太陽光パネルを設置し、その下で芝生を育てる営農型太陽光発電、いわゆるソーラーシェアリングの事例です。ローカルエナジー、ガイナーレ鳥取、Jリーグの補助制度などが関わり、発電した電力は境港市内の中学校へ送られています。

特に面白いのは、パネルの下で育てているのが、サッカー場などで使われる芝生であることです。太陽光発電というと、農地をつぶす、景観を損なう、地域に利益が残らない、といった批判もあります。しかしこの事例では、荒廃農地を使い、電気を生み、芝生を育て、地域スポーツや学校、防災、環境教育にもつなげようとしている。単に「パネルを並べる」のではなく、地域の複数の課題を一緒に解こうとしている点が特徴的でした。

ここが面白いのは、再エネ、荒廃農地対策、学校、地域スポーツ、環境教育が一つにつながっているところです。青森県でそのまま同じことができるとは限りません。雪、農地、景観、地域合意の課題もあります。ただ、農業と再エネを対立させるのではなく、農地を守りながら新しい収入や地域の使い道をつくる発想は、青森でも検討する価値があります。たとえば耕作放棄地、公共施設、学校、スポーツ施設、農業法人などをどう結びつけるか。ソーラーシェアリングを考える際にも、発電量だけではなく、誰の土地で、誰が管理し、何を育て、地域に何が残るのかをセットで見る必要があると感じました。

再生可能エネルギーというと、どうしても「発電するかどうか」「賛成か反対か」という話になりがちです。しかし、ローカルエナジーの取組で大事なのは、電気を売る会社というより、エネルギーを地域課題解決の手段として位置づけていることでした。

公共施設の電力契約を地域新電力に切り替えることで、安定した需要をつくる。清掃工場など地域内の電源を活用する。行政は会社経営を直接担いすぎず、しかし立ち上がりの段階では需要や電源の面でしっかり支える。この役割分担が非常に参考になりました。

青森県でも、再エネの導入は進んでいます。一方で、発電による利益やノウハウがどれだけ地域に残っているのか、県民には見えにくいところがあります。これからは、単に再エネを増やすだけではなく、地域の電気を地域で使い、地域内でお金や雇用、技術が回る仕組みをつくることが重要です。

特に県有施設や公共施設の電力調達について、最安値だけを見るのではなく、再エネ比率、地域内経済循環、防災力、地域貢献、県内企業の参画なども評価する調達のあり方を検討できないかと思います。公共部門が安定需要になることで、地域エネルギー事業を育てることもできます。

5 トキを守ることは、まちをつくること

出雲市トキ分散飼育センターでは、トキの保護増殖と自然共生社会の構築について調査しました。印象的だったのは、トキを単なる希少種保護の対象としてではなく、自然共生のまちづくりの象徴として位置づけていたことです。

出雲市トキ分散飼育センターのトキ
トキをきっかけにした米のブランド化

トキが生きられる環境を整えるには、水田や里山の環境を守る必要があります。つまり、トキの保護は、農業、環境教育、地域の誇り、企業や市民の参加、米のブランド化とつながっていきます。出雲市の取組は、保護事業であると同時に、まちづくりそのものでした。

一方で、理想を一方的に押しつけているわけではありませんでした。無農薬や環境にやさしい農業は大切ですが、人手不足や病害虫の不安もあります。農業者と話し合いながら、できる範囲で協力を得ていく姿勢がとても現実的でした。

青森県にも、白神山地、八甲田、岩木山、十和田湖、奥入瀬渓流、陸奥湾、津軽海峡、下北半島など、豊かな自然があります。一方で、クマ、ニホンジカ、イノシシ、農林業の担い手不足、耕作放棄地、里山の管理など、自然との関係をどうつくり直すかという課題もあります。

生物多様性や野生動物との共生を、環境部局だけの政策に閉じ込めてはいけないと思います。農林水産業、教育、観光、地域づくり、企業連携まで含めた横断的な政策として考える必要があります。トキのように、青森の自然を象徴する存在や物語をどうつくるかも大事な視点です。

視察を終えて

今回の視察で共通していたのは、人口減少を前提にしながらも、「だから縮むしかない」とは考えていないことでした。少人数学級で教育の質を高める。若者や女性が関われる人口戦略をつくる。砂丘を宇宙産業の実証フィールドに読み替える。地域の電気を地域で回し、ソーラーシェアリングで農地や教育ともつなげる。トキを通じて自然共生のまちをつくる。

どれも、地域にすでにあるものを、別の角度から見直す取組です。

青森県にも、資源はあります。雪も、海も、山も、農林水産業も、文化も、地域の人の営みもあります。課題は、それらをどうつなぎ、どう地域の暮らしや仕事、子どもたちの学びに結びつけていくかです。

行政の役割は、補助金を出すことだけではありません。人と人、企業と地域、大学と現場、自然と産業、子どもたちと未来をつなぐこと。そのためのコーディネート機能が、これからますます重要になると感じました。

出雲市トキ分散飼育センターにて


出典:令和8年度 立憲民主・無所属の会 議員派遣結果報告書

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