
大分県視察報告|地熱発電と、地域資源を活かしたまちづくり
目次
地熱発電と、地域資源を活かしたまちづくり


令和7年1月23日、会派の県外視察で大分県を訪れました。午前は九重町の八丁原地熱発電所、午後は豊後高田市の「昭和の町」を調査しました。
一見すると、地熱発電と商店街再生は別々のテーマに見えます。でも、どちらにも共通しているのは、地域にあるものをどう活かすか、ということでした。地下の熱も、古い商店街の建物も、そこにあるだけでは地域の力にはなりません。地域の人、事業者、行政がどう関わり、どう続けていくか。そこが大事なのだと思います。
青森県にも、温泉地帯、火山、自然、古いまちなみ、祭り、食、暮らしの記憶があります。ないものを嘆く前に、あるものをどう見直すか。今回の視察は、そのことを考える機会になりました。
視察の概要
日程
令和7年1月23日
主な視察先
八丁原地熱発電所/豊後高田市観光まちづくり株式会社
主なテーマ
地熱発電、地域資源を活かした観光、商店街再生、まちづくり
青森県政との接点
再エネの地域活用、地熱・温泉資源、地域主体の観光まちづくり
1 地熱発電。夢の電源ではない。でも、見続ける価値はある。

大分県は、温泉の源泉総数と湧出量が日本一であり、地熱発電の発電量や再生可能エネルギーの供給量、自給率も日本一とされています。今回訪問した八丁原地熱発電所は、大分県九重町にある日本最大の地熱発電所です。
八丁原地熱発電所は、1977年完成の1号機、1990年完成の2号機を合わせて、発電出力11万kW。地下から取り出した蒸気と熱水を分離し、さらに分離後の熱水からも蒸気を取り出す「ダブルフラッシュ方式」を世界で初めて採用した発電所でもあります。一般的な方式より発電効率が約20%向上するとのことでした。
地熱発電は、燃料を必要としない純国産の再生可能エネルギーです。天候に左右されにくく、出力も安定しやすい。適正に管理すれば、長期にわたって使い続けられる電源でもあります。大岳発電所が56年、八丁原発電所が46年の安定運転という話は、かなり重みがありました。




2 ただし、地熱は簡単ではない
一方で、地熱発電は「やればすぐできる」ものではありません。地熱発電には、熱源、地熱貯留層、水という条件が必要です。しかも、実際にどれくらいの資源量があるのかは、調査井を掘ってみなければわかりません。
報告の中では、調査井を1本掘るだけで現在は約10億円かかること、開発まで10年から20年という長い時間がかかること、高度な技術が必要なこと、温泉事業者や地域の理解が不可欠であることが課題として示されました。つまり、かなりハイリスクです。
だから、地熱発電を「青森でもすぐに大規模導入すべきだ」と簡単に言うつもりはありません。大分と青森では土地条件も違います。温泉との関係もあります。地域の合意形成も必要です。ここを雑に扱うと、再エネそのものへの信頼も損ないます。
青森県政につなげるなら
青森県にも温泉地帯や火山があります。下北半島北部の燧岳での調査なども一例です。大規模発電だけでなく、小規模な熱利用、温泉熱、バイナリー発電、農業・観光との連携など、地域に合った形で可能性を見続けることが大事だと思います。
3 地熱で一番大事なのは、自治体・事業者・地域の関係
視察で特に印象に残ったのは、発電技術だけではありません。発電に使えない余剰熱を温泉造成に活かし、自治体などへ無償提供し、周辺地域で浴用や暖房に使うなど、地域との関係づくりが行われている点です。
菅原バイナリー発電所では、自治体、事業者、地域の三者がそれぞれ利益を得られるような官民協働の仕組みもあるとのことでした。再エネは、設備を置けばよいという話ではありません。地域の資源を使う以上、地域の納得と、地域への還元が必要です。
これは、地熱だけでなく、風力、太陽光、小水力、バイオマスなどにも共通する話です。自治体が、地域と事業者のあいだで調整し、情報を出し、合意形成を支える役割を果たせるか。青森県の再エネ政策でも、ここが非常に重要になると思います。
4 豊後高田市「昭和の町」。壊して新しくするだけが再生ではない

午後は、豊後高田市の「昭和の町」を視察しました。過疎化が進む中、衰退していた商店街を、昭和30年代のにぎわいをテーマに再生した取り組みです。
かつて中心市街地には300店を超える店舗が並んでいたものの、大型店の進出、後継者不足、人口減少などで商店街は衰退していきました。一時は、商店街をすべて壊し、ドーム型の野球場や商業施設をつくるような大規模再開発案もあったそうです。
しかし、その構想は白紙になります。人口2万人規模のまちで本当にそれができるのか。そもそも、商店街の再生としてそれでよいのか。そうした疑問から、改めて商店街の人たちが話し合い、自分たちの商店街を活かす方向へ進みました。ここがとても大事だと思いました。




5 「昭和」を売るというより、まちの記憶を磨く
「昭和の町」は、単にレトロな看板を並べた観光地ではありません。取り組みの柱は、昭和の建築再生、昭和の歴史再生、昭和の商品再生、昭和の商人再生の4つです。建物、店に残る宝物、店自慢の商品、そしてお客さんと直接向き合う商人の姿。その全部をまちの魅力として磨いていました。
スタート時は7店舗だった参加店舗が、現在は58店舗まで広がっています。「犬や猫しかいない」と言われた商店街に、年間40万人以上が訪れるようになり、コロナ禍で落ち込みはあったものの、現在も20万人を超える観光客が訪れているとのことでした。
さらに、ブランド化が市民のシビックプライドにつながり、商工業者の後継者増、UIJターン者増、企業誘致、移住者増、10年連続の人口社会増といった成果も出ているとされています。もちろん、今後は店舗の高齢化、後継者、補助金に頼りすぎない自立などの課題もあります。成功事例だからこそ、続けていく難しさもあるのだと思います。
6 青森にも、まだ見えていない資源がある
豊後高田市の事例から感じたのは、まちづくりは「外から正解を持ってくる」ものではないということです。まちのことを一番知っているのは、そこに暮らし、商いをし、日々を営んでいる人たちです。
地方の活性化というと、つい大規模開発や企業誘致に話が流れがちです。もちろん、それらをすべて否定するわけではありません。ただ、地域ならではの建物、郷土文化、商店街、祭り、食、暮らしの記憶を見直すことも、立派な地域づくりです。むしろ、そこにしかないものは、そういう足元にあるのだと思います。
青森県内にも、古い商店街、港町、温泉街、りんごのある風景、雪国の暮らし、地域ごとの祭りや食文化があります。観光資源として磨けるものは、まだまだあるはずです。県や市町村は、地域の当事者の主体性を奪うのではなく、情報提供、ネットワークづくり、財政支援、人材育成などで伴走することが必要です。
視察を終えて
青森県政へつなげたいこと
地熱発電と「昭和の町」。テーマは違いますが、どちらも「地域資源をどう活かすか」という視察でした。
地熱は、自然のエネルギーです。ただし、地域の理解なしには進みません。商店街再生も、古い建物や昭和の記憶があれば勝手に進むわけではありません。地域の人たちが、自分たちのまちをどう見つめ直すかが大事です。
青森県にも、温泉、火山、自然、商店街、文化、食、雪国の暮らしがあります。ないものを外から持ってくるだけではなく、あるものをどう見直し、地域の暮らしと経済にどうつなげるか。
今回の視察で得た学びを、再生可能エネルギーの地域活用、地域内経済循環、観光地域づくり、商店街・温泉地の再生といった県政課題につなげていきます。
出典:青森県議会「派遣結果(別紙)」令和6年度会派視察報告書







青森県庁ホームページ
青森市ホームページ